個人事業主の経験を本で伝える:実例の選び方

仕事の経験を本へまとめるとき、実例があると考え方や手順を説明しやすくなります。
ただし、経験した出来事を詳しく書けることと、その内容を外へ公開できることは別です。
個人事業主の仕事には、自分の判断だけでなく、依頼者の情報や、共同で行った作業も含まれることがあります。
ナガーノがこの記事で整理するのは、経験から本に使う実例を選び、説明の目的と公開できる範囲をそろえる方法です。
大きな成果だけを探すのではなく、読者が考え方を理解できる場面を選びます。
守る情報と、本文で説明する内容を、原稿を作る前に分けていきましょう。
実例は、説明したい疑問から選ぶ
先に、本のどの疑問を説明するために実例が必要かを書きます。
判断の前提、作業の順序、確認漏れ、複数案の比較など、実例の役割を決めます。
役割が決まると、出来事のすべてを書く必要がないとわかります。
経験の実例は、読者へ伝える判断や手順を先に決め、その説明に必要で公開できる情報だけを選びましょう。
大きな成果があるかより、その章の疑問に具体的に答えられるかを見ます。
内容が面白くても本のテーマに関係しない例は、今回の本文へ入れるかを再検討してください。
自分が担当した作業を明確にする
仕事全体の中で、自分が行った部分を一覧にします。
依頼内容の整理、提案、制作、確認、進行などへ分けます。
共同で行った作業は、相手の役割と混ざらないようにします。
全体の成果を、著者一人で生んだ結果として書かないようにしてください。
原稿では、自分が何を確認し、何を判断したかが読者に伝わる説明を考えます。
担当した内容が具体的になると、肩書きや大きな数字を加えなくても、経験と本の説明をつなぎやすくなります。
出来事の記録と、自分の解釈を分ける
実際に行った作業、確認した情報、その時点の条件を記録しておきましょう。
そこから学んだことや、現在の考えは別に書きます。
あとから気づいた点を、その当時すでに確認していたこととして書き直さないようにします。
結果が出た理由が不明なら、一つの作業だけが原因だったと断定しません。
本の読者へ伝える際は、何が事実で、何が考察なのかを区別します。
解釈を添えることはできますが、それを相手の発言や確認済みの成果へ置き換えないようにしてください。
公開できる資料を、作業用の資料と分ける
契約書、相談の記録、メール、画像、制作物などは、資料ごとに利用できる範囲を確認します。
自分の手元にあることを、公開してよい根拠にしないようにします。
本の原稿へ使える情報と、確認のためだけに保管する情報を分けて考えてみましょう。
原稿を制作担当へ渡す場合も、不要な顧客情報を資料一式へ混ぜないようにします。
掲載が決まっていない資料は、完成原稿へ添えた画像として扱いません。
何の情報をどの目的で確認するかを決め、必要な範囲で資料を使ってください。
名前を消すだけで判断しない
氏名や会社名を削っても、時期、場所、業種、内容の組合せから相手がわかることがあります。
個人情報保護委員会も、氏名等を削除しても、ほかの情報と容易に照合して個人を識別できる場合の扱いを説明しています。
考え方は個人情報保護委員会の氏名等を削除した情報に関する回答を確認してください。
原稿では、名前以外の情報も合わせて見ます。
匿名と呼んだことだけで、公開できる条件を満たしたと判断しません。
個別の掲載の可否がわからない場合は、判断が必要な項目を残し、確認ができるまで実際の情報として使わないようにします。
契約や合意した範囲を確認する
依頼者と合意した利用範囲や、守秘に関する条件があれば確認します。
以前にサイトへ掲載したことがある例でも、書籍への掲載まで同じ条件かを調べます。
文章だけでなく、写真、制作物、数値、相手の発言の扱いも分けます。
掲載の許可を確認する場合は、何をどこへ載せるかが具体的にわかる資料を用意します。
返答がないことを、掲載を認められたこととして扱いません。
ここでは個別の契約の解釈を決めるものではなく、原稿へ使う前に確認する情報を整理しています。
説明に必要な条件だけを残す
実例を読者へ伝えるために必要な前提と、詳しくなくても理解できる情報を分けてみてくださいね。
作業の順序を説明する例なら、相手の住所や細かな個人の事情が必要かを考えます。
不要な詳細を増やすと、公開する情報も増え、説明の焦点が見えにくくなります。
ただし、条件を省いた結果、別の判断にも使えるように誤解されないかを見ます。
何を省略したかを手元で記録して、結論に必要な条件が残るかを確認しておきましょう。
必要な情報の選別と、事実を変えて見せることは、別の編集作業として扱ってください。
実例を使えない場合は、架空の例を検討する
公開できない仕事の詳細を使う代わりに、説明したい判断の条件から架空の例を作る方法があります。
その場合は、架空の説明用の例と明記します。
実際の成果や、ナガーノの実績として紹介するものではありません。
例の条件は、読者が手順を理解するために必要なものを選びます。
実在する相手の特徴を一部だけ変えた場合も、それで公開できると決めつけないようにします。
架空の例を作る目的は、守る情報を無理に公開することではなく、説明に必要な場面を別に設計することです。
複数の経験をまとめた例は、位置づけを示す
複数の場面で気づいた点を、説明のために一つの例へまとめる場合があります。
その場合は、一人の実在する依頼者との出来事として紹介しないようにします。
説明用に再構成した例であることがわかる言葉を添えます。
使った要素が公開できるかは、別に確認します。
数字や発言を組み合わせて、実際には存在しない成果の記録を作らないようにしてください。
読者が例から考え方を理解できることと、実在した出来事の記録として読むことを区別できる原稿へ整えましょう。
数字を載せる場合は、対象と期間をそろえる
費用、作業時間、件数、反応などの数字を使う場合は、何を数えたものかを確認します。
同じ条件で比較できない数字を、改善の結果として並べないようにします。
確認した期間と、対象に含めた範囲を記録しておくと、後の確認にも使えますね。
一部だけの数値なら、全体の結果として紹介しません。
結果の原因が確定していない場合は、数字の変化だけから因果関係を断定しないようにします。
読者へ必要な数字かを考え、根拠と掲載条件がそろわないものは、推測した値で埋めないでください。
失敗の例は、誰かを評価する話にしない
どの条件で、何が起きたのでしょうか。
確認漏れや判断の難しさを説明するときは、出来事をこの二つに分けて整理してみましょう。
相手の能力や性格を決めつける説明へ置き換えないようにします。
自分の判断や、あとから見直した点も分けて書きます。
読者が次に確認できる項目へつながる説明を考えます。
公開できない詳しい経緯が必要になるなら、実在の例を使うかを再検討してください。
失敗の話を刺激的にするより、同じ迷いが出たときに何を確認するかが伝わる内容を優先しましょう。
架空の実例で、判断の順序を説明する
例として、小さな店舗の商品説明を整える架空の仕事を考えます。
最初に、商品の特徴を多く並べた説明があり、誰の疑問に答えるかが曖昧だったとします。
そこで、想定する読者と質問を整理し、必要な情報を選び、説明する順序を変える作業を行う例を作ります。
本文では、各段階で何を確認するかを示します。
売上が伸びたという結果は、この例へ勝手に付け足しません。
読者の疑問から説明を組み立てる手順を理解するための例として扱います。
実例の最後に、読者が使う問いを置く
出来事を読んだあと、あなたの状況では何を確認するかという問いへつなぎます。
条件は同じか、資料はそろっているか、判断する範囲はどこかを考えられるようにします。
例の結果だけをまねる構成にしないようにします。
自分の状況が違う場合に、追加で確認する項目も示します。
問いの答えがわからないなら、未確認と残せる説明を入れます。
実例を読んでわかったことと、本人の資料からまだ調べることを分けられる構成へ整えてください。
実例の数は、章の目的から決める
数を増やすことだけを目標にすると、同じ説明が続くことがあります。
それぞれの例が違う疑問や条件を示しているかを確認します。
同じ結論を伝える例なら、比較する必要があるか、どちらかへ整理できるかを考えます。
一つの例を詳しくする場合も、読者の理解に関係しない経緯を増やしすぎないようにします。
目次と実例の対応を一覧にすると、足りない説明と重複が見えやすくなります。
実例の豊富さを実績の多さと同じ意味で見せず、原稿の説明の役割として配置しましょう。
写真や図には、別の掲載確認を行う
文章の例を掲載できても、写真や制作物を同じ条件で使えるとは限りません。
撮影した人、写っているもの、使う素材の権利、利用条件を確認します。
画面の画像には、名前や連絡先、管理用の情報が写っていないかも見ます。
拡大すると読める小さな文字も、本文用の画像として使う前に確認します。
別の説明用の図を作る場合は、実物の記録と混同しない形にします。
画像を追加すればわかりやすくなると決めつけず、その画像で何を説明するかを先に選んでください。
掲載前の確認表を、例ごとに作る
例の管理名、対応する章、説明する疑問、実在か架空か、利用する資料、掲載の確認状況を残します。
未確認の項目は、完成原稿とは別に管理します。
掲載できる文章が決まったら、その版を確認用として残します。
確認後に数字や発言を追加した場合は、追加した内容も再確認します。
一度許可を確認した例だから、後の変更もすべて同じ条件でよいと考えません。
確認表と原稿が対応していれば、どの例を制作担当へ渡してよいかを判断しやすくなります。
制作担当には、確認済みの内容を渡す
原稿の編集を依頼する場合は、掲載できる文章と、まだ判断が必要な候補を分けて考えてみましょう。
担当者が内容を整えるために、未確認の数字を補ったり、経験を増やしたりしないようにします。
例の役割と、変えてよい説明の範囲を伝えます。
出来事の順序や発言を変更する場合は、事実として書く部分への影響を確認してみてください。
文の読みやすさを整える作業と、掲載する情報を決める作業を区別します。
資料を多く渡すことより、対象の例に必要な確認済みの情報がそろうことを優先してください。
著者プロフィールと、実例の説明を照合する
プロフィールで紹介した役割と、本文の実例で行った作業が合っているかを確認します。
実例では一部の確認を担当したのに、プロフィールでは全工程を一人で行ったように見せないようにします。
実績の数字を載せる場合も、例の数と仕事の件数を混同しません。
架空の例を多く作ったことを、担当した実際の案件数として紹介しないようにします。
本の原稿、著者紹介、サイトの紹介文を同じ情報から点検します。
著者の背景と実例の位置づけが一致すると、読者が何を根拠にした説明なのかを理解しやすくなります。
公開後の案内にも、例の位置づけを保つ
本の中で架空とした例を、サイトの紹介では実際の成果のように案内しないようにします。
実例の一部を紹介する場合は、前提を省いた結果、意味が変わらないかを確認します。
文章を短くしても、条件や役割が必要なら残します。
表紙や著書紹介で、本文にない実績や評価を追加しません。
変更が必要なときは、元の確認表と掲載した文章を照合します。
本の説明を別の場所へ使う際も、掲載できる範囲と、読者へ伝える事実の正確さを保ってください。
経験を、読者が考える材料へまとめる
選んだ例を並べたら、それぞれの章で読者が考える問いも一覧にします。
同じ問いが続くなら、例を増やすより、条件の違いを説明する必要がないかを調べます。
掲載の確認が終わった例と、説明の順序が整った例は、別の確認として記録してください。
実例は、自分が行った作業と、読者へ伝える判断の順序を具体的にするために選びます。
公開できる範囲を確認し、実在の記録と説明用の例を区別します。
守る情報を分けながら、必要な条件と判断を具体的に示すと、経験を読者が自分の課題へ照合できる材料にできます。
ナガーノの出版代行サービスの対応内容や申込み条件は、案内ページで確認できます。
あなたの原稿に使う実例と確認状況を整理し、編集や出版の制作で相談したい範囲を具体的にして検討してください。